簡易水冷キットが冷えない原因は何?修理方法を紹介!

2023年8月15日

簡易水冷冷却システムのポテンシャルと注意点

近年、パソコンの高性能化が進む中で、熱管理の重要性も増しています。その中で注目されているのが「簡易水冷冷却システム」です。この記事では、冷えなくなった簡易水冷の復旧方法を紹介しています。

メリット

  1. 効率的な冷却: 簡易水冷は、空気冷却に比べて卓越した冷却能力を備えています。水の熱伝導率が高いため、高負荷のコンポーネント(CPUやGPU)を効果的に冷却し、パフォーマンスを安定させることができます。
  2. 静音性: 簡易水冷システムは、一般的に空気冷却よりも静かです。風扇の騒音が低減され、長時間の使用でも快適な環境を提供します。
  3. オーバークロックのサポート: 高い冷却効率を持つ簡易水冷は、オーバークロックのパフォーマンス向上を支援します。クロック速度を上げて、最大限の性能を引き出せる利点があります。
  4. コンパクトな設計: 簡易水冷システムは、空気冷却に比べてスリムなデザインを持っています。これにより、ケース内のスペースを節約でき、PCのレイアウトを工夫できます。

注意点:

  1. リーク対策: リークは最大の懸念事項です。漏れた冷却液がコンポーネントに接触すると大きな被害をもたらす可能性があります。取り扱いには細心の注意が必要です。
  2. メンテナンス: 定期的なメンテナンスが不可欠です。クーラントの交換やシステム内部の清掃を怠らないようにしましょう。劣化したクーラントは効率が低下し、トラブルの原因になります。
  3. 取り付け: 正確な取り付け手順を守ることが重要です。不適切な取り付けは冷却性能を損なうだけでなく、リークのリスクを高めます。
  4. エアバブル: システム内のエアバブルが冷却効率に影響を及ぼすことがあります。インストール後、エア抜きを念入りに行うようにしましょう。
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メンテナンス

簡易水冷冷却システムは高性能PCの熱管理において優れた選択肢ですが、適切な取り扱いと定期的なメンテナンスが必要です。これに気を付けることで、効率的な冷却と静音性を享受できるでしょう。

簡易水冷冷却システムのメンテナンスは、システムの性能を維持し、トラブルを予防するために非常に重要です。以下に、簡易水冷冷却システムの基本的なメンテナンス方法をまとめました。

  1. クーラントの交換
    • クーラントは時間とともに劣化します。定期的にクーラントを交換することで、冷却性能を維持します。
    • クーラントの交換周期は製造元の指示に従ってください。一般的には1年に1回から2年に1回程度が推奨されます。
  2. システム内部の清掃:
    • 定期的にシステム内部を清掃し、ホコリや異物を除去します。これによりファンや冷却ブロックの効率が向上し、冷却性能が維持されます。
  3. エアバブルの除去
    • 初めて水冷システムをインストールした後やシステムを変更した後には、エアバブルがシステム内に残ることがあります。エアバブルは冷却能力に悪影響を及ぼすことがあるため、エア抜きを行いましょう。(簡易水冷は省く)
  4. システムの動作確認:
    • 定期的にシステムの動作を確認します。ファンが正しく動作しているか、クーラントが漏れていないかなどを確認しましょう。
  5. リークのチェック:
    • リークのチェックを定期的に行いましょう。クーラント漏れがないか、チューブやコネクタが正しく接続されているかを確認します。
  6. 適切な環境:
    • PCの設置場所に注意しましょう。適切な通気性と冷却を確保するため、狭いスペースや高温の場所から遠ざけることが重要です。

これらのメンテナンス手順を定期的に実行することで、簡易水冷冷却システムの性能を維持し、安定した運用ができるでしょう。また、製造元から提供される具体的なメンテナンスガイドに従うことも重要です。

メンテナンス不足で発生するトラブル

簡易水冷はメンテナンスフリーだと思われる方が多いようですが、実は2~3年でクーラントが劣化して全く冷えなくなります。
クーラントは徐々に劣化していく為、気付いた時には既に冷えない状態に至っている事がほとんどです、 CPUが高温に達すると、CPUはクロック周波数を下げて動作することで発熱を抑えます。これにより、一時的にパフォーマンスが低下しますが、過熱による損傷を防ぐことが出来ますこれをサーマル・スロットリングと言います。
これでも気付かなかった場合は自動シャットダウン: 一定の高温に達すると、一部のシステムでは自動的にシャットダウンする保護機能が備わっています。これにより、システム全体の安全性を確保します。

サーマル・スロットリング状態時

現象説明と応急処置

簡易水冷のヘッドのみ取り外し清掃する応急対応的な清掃方法と完全に取り外してのクーラントを交換する方法の二通りの有りますが、初期の場合の応急対応的な清掃方法を紹介します。
この方法はヘッドをラジエターより高い位置で維持する必要があるため、二人作業を推奨します。

ヘッド取り外しの注意点

CPUと水冷ヘッド部は固着してCPUごと引き抜いてしまう事が有りますのでヘッド部分を押さえながら金具を外し、ひねりながら取り外すようにしてください。
冷却チューブの跳ね上りで抜けてしまった場合でもピンが曲がっていなければ元に戻せますので慌てない様にしてください。

サンプル画像 (ENERMAX アドレッサブル型RGB LED水冷CPUクーラー)

ヘッドの分解清掃

ヘッドの固定に使われているネジは特殊なネジが使われており、機種に因ってはロックネジが使用されている事も有りますので、それらを取り外す工具を準備する必要があります、この機種「MSI MAG Core Liquid 360R V2」にはロックネジは使用されていませんがクーラント交換で紹介する「ENERMAX アドレッサブル型RGB LED水冷CPUクーラー」にはロックネジが使われています、マイナスドライバーで何とか外せますが分解できない場合も有りますのでご注意下さい。

ロックネジ以外の星形のトルクネジは9番ビットを使い取り外します

ロックネジは色々試した結果 槍型2.6番ビットで外れました。

今回使用したドライバーセットは「精密ドライバーセット MOVMAO 130 in 1 103種」を使用して取り外しました、種類が豊富で殆ど全ての特殊ネジに対応していますので便利です、安価なのでお勧めです。

【130 in 1のドライバーキット】豊富なビット数で、これ1つで十分(switch可能)①103種精密ビット②グリップ*1③延長シャフト*1④フレキシブルシャフト*1⑤ピンセット*1⑥電動ドリル用ホルダー*1⑦吸着カップ*1⑧SIM取り出しピン*1⑨磁気シート(もう小ネジを探さなくて良い)*1⑩マグネタイザー*1⑪ケースオープナー*3⑫オープニングピック*14⑬収納ケースx1[ご注意:延長シャフトの位置-クリップの黒い部分を押して延長シャフトが出現!]

分解するとヘッド内部には白い藻の様な物が詰まってしまっています。
水の流れが悪くなり冷却機能の低下を引き起こした事がトラブルの原因です。
銅板部分を水で洗い流して元に戻せば冷却機能は復活します。(ヘッド本体はラジエターより高い位置で水をこぼさない様に固定してください。)
ただ、クーラント交換をしない状態だと数か月で再発します。

簡易水冷の目詰まり画像
2021/12月購入 2023年6月 2度目の清掃

クーラントの交換

クーラントの交換では簡易水冷ユニットをPCから取り外す必要がありますので非常に面倒な作業内容となりますので時間に余裕が有る時に行うようにしてください。

クーラント交換はサブPCの「ENERMAX アドレッサブル型RGB LED水冷CPUクーラー」を使います。

交換に必要な物は以下の通りです。

  • 洗面器 (両手が入る容器)
  • 精製水
  • 安定電源
  • クリップ
  • ゴム手袋
  • CPUグリス

電源の接続

カプラにペーパークリップを挿し込み電極を繋いで固定をします、カプラの↑側が「マイナス」で中央が「プラス」です、外れないようにしっかりとテーピングして下さい。

簡易水冷システムの電極画像
簡易水冷システムの電極固定画像

電圧設定

安定化電源の電圧設定を12V 1Aに設定して作動テストを行います、接触不良で動かない場合が有りますので念のためです。

簡易水冷システム電圧画像

ヘッドの分解

銅板を取り外し、不純物を洗い流しておきます。

簡易水冷システムクーラント交換画像1
簡易水冷システムクーラント交換画像2

呼び水の追加

水冷ユニットのポンプは吸い上げる能力が弱く、水で満たしておかないと循環しませんので呼び水を追加してから水がこぼれ落ちないように銅板をかぶせます。(ネジは外してください)水が漏れ出さないように指で押さえつけながら作業を進めます。

簡易水冷システムクーラント交換画像3

クーラントの入れ替え

精製水を深さ30㎜程度入れた容器にヘッドを沈めます、水中で銅板を取り外して水を循環させて行きます、空気が入ってしまった場合は上手く循環しませんので再度 呼び水を足してやり直してください。

簡易水冷システムクーラント交換画像4

上手く行くと15分程度で大まかなゴミが出ていきますので精製水をつぎ足して手が入る深さにします。

電源を切ってから 水の中で銅板を取り付け水から引き揚げます、この時は可能な限り空気が入らないように注意して裏返して下さい。

再び呼び水を足してから樹脂のパッキンと銅板を取り付けます。
隙間が開く程度にネジ1~2本で仮止めします、水が漏れ出さない様に指でしっかり押さ得ながら再び水中に戻します。

簡易水冷システムクーラント交換画像5
簡易水冷システムクーラント交換画像6

エアー抜き

この状態では細かな気泡が残つた状態ですのでポンプから異音が出ている状態だと思います、気泡を抜く為にワザと銅板との間に隙間を作り気泡を追い出していきます。

簡易水冷システムクーラント交換画像7
簡易水冷システムクーラント交換画像8

写真では見辛いですが大量に気泡が出て行きます、ポンプの異音が無くなるまで約5分程度、持ち上げた状態をキープしてください、基盤部分まで水に付けてしまうと故障の原因となりますのでここは耐えて下さい。

出来ましたら銅板部分の隙間が無くなる程度の力で押さえつけながら水から引き揚げます。裏返してネジ止めを行ってエアー抜きは完了です。

余分な水分を拭き取って異音が無ければ成功です、異音が有ればエアーが残っていますのでやり直しです。

簡易水冷システムクーラント交換画像9

PCへ再設置

異音が無ければ、接地面にCPUグリスを塗り元通りにPCに取り付ければ完成です。

簡易水冷システムクーラント交換画像10

お疲れさまでした、これで2年は延命されたと思います。
ただ、安定化電源の購入費に約7000円掛かりますのでお持ちでない場合は買い替えた方が手っ取り早いかもしれません。

DIY修理,異音

Posted by asyura